グレープフルーツ(ジュース)摂取により、カルシウム拮抗薬の消化管からの吸収はどのようにして増加しますか?


グレープフルーツ(ジュース)に含まれる阻害成分(フラノクマリンが代表的阻害成分)によって小腸における代謝酵素CYP3A4の機能が不可逆的に不活性化されるため、消化管吸収時のカルシウム拮抗薬の代謝が減少し、吸収が増加します。



経口投与されたカルシウム拮抗薬は小腸上皮細胞から吸収され、血液中へ取り込まれます。
小腸上皮細胞には薬物酸化代謝酵素の1つであるチトクローム P450(CYP3A4)が存在するため、吸収されたカルシウム拮抗薬は血液中へ移行する前に一部分が代謝・分解されます。
カルシウム拮抗薬によっては、この「消化管上皮細胞での代謝・分解」を非常に強く受けるものがあります。
その後、吸収された薬物は、一部が肝臓に取り込まれ、肝臓のCYP3A4によっても代謝・分解されます。
グレープフルーツ(ジュース)を摂取すると、ジュース中に含まれる阻害成分によって小腸上皮細胞のCYP3A4の機能が不可逆的に損なわれ、そこでのカルシウム拮抗薬の解毒代謝ができなくなり、血液中へのカルシウム拮抗薬の吸収(移行)が増加することになります。この時、肝臓の CYP3A4は阻害されないことが分かっています。


グレープフルーツと免疫抑制薬


カルシウム拮抗薬は小腸上皮細胞に存在するCYP3A4によって代謝されます。
しかしグレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン類によってCYP3A4が不可逆的に阻害されることで、代謝ができなくなってしまいます。
一方、免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス)に関しては、CYP3A4においてはカルシウム拮抗薬と同様ですが、グレープフルーツジュース成分によるp-糖タンパク質機能の分泌機能阻害も関与していると考えられています。

しかし、最近行われたヒト試験において、P-糖タンパク質を介した相互作用の機序については、否定的な結果が出されています (PMID:10227700) (PMID:11673746) (PMID:15903127) 。グレープフルーツのP-糖タンパクを介した機構については現時点では明確でなく今後のさらなる検証が望まれます。